ソウルフードのだし巻き玉子
一番好きな食べ物は、と聞かれたら、たまご。と答えてしまうかもしれない。でも、たまごはどんな姿にもなれて、どれも美味しいので答えにするには反則かもしれないけれど。卵かけご飯も、スクランブルもサニーサイドアップも、食べ方で魅了される素材は私の中でたまごが永遠のいちばんだ。料理はたまごに始まりたまごに終わる、と言われるように、たまごをマスターするのが暮らしの目標のひとつでもある。
心を素直に戻したいとき、身体が少し疲れたとき、いつも食べたくなるのはじわっと出汁が染み出すだし巻き。前回帰国したときに、スーツケースに四角いフライパンを忍ばせてきた。日本にいたときの私は成功したことがなかっただし巻きも、こちらで食べたいと思った回数ぶん、いつのまにか上達しつつある。でも毎回反省が残るので、まだまだ修行中の身ではあるのだけれど。
出汁の量や甘さなど、体が求めているときに微調整をしながら。卵が2個に対して、ヴィンテージマーケットで持ち帰った小皿いっぱいの調味料がちょうど良いとわかった。計ってみたら、大さじ2と3分の2ほど。そしてまたスーツケースに忍ばせてきた、この片口の器がだし巻きを作るのにも、器としても本当に大活躍している。
巻く」ことを意識しすぎていたのだけど、はじめは寄せるだけでも、あとから形になってくれる。油をきちんと毎回ひくこと、強火と中火の間ほどを守る。基本を忠実に、その通りにすることがとても大事。基礎、について、頭を柔らかくすることについて、いつも考えさせられるのがこのだし巻き。
よいしょ、なんてつい口に出てしまうけど、集中できて、心が落ち着くような気もする。うまく巻けたときには、その日がハッピーに感じられるほど!
できたては、いつもホースラディッシュ(山わさび)を添えて。道民の私には馴染み深い山わさび、醤油との相性も抜群。ほんのりぴりっとする味と、じゅわーっと出汁が染み出てくる、ふわりと優しいだし巻きと。ご飯が、もりもり食べたくなる。
お皿にじわっと染み出た出汁の具合で、今日の出来具合を測ったりして。焦げ目や角のカーブ具合も。なんだか占いのような気分も楽しくなる。頭を落ち着かせたいときには、ぜひおすすめ。ほっとする味のだし巻きは、私のソウルフードのひとつ。
だし巻きたまご、覚えやすい量で、
・卵 Mサイズ2個。二人で食べるときには3個がおすすめ
・出汁 大さじ2
・みりん 小さじ1
・醤油 小さじ1
・砂糖 小さじ1
・調理用オイル 適量
All photo by Kaori