Season of Mussels 〜 旬を先取りするムール貝

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ヨーロッパにいて幸せだな、と思う瞬間は、美味しい食べ物が身近で手軽に楽しめることもひとつ。牡蠣と同じように、”R”の付く月(September…から始まる季節)が特に美味しいと言われるムール貝も、これからシーズンを迎える。オランダではZeeland州と呼ばれる地域で養殖され、ムール貝が名産と言われるベルギーで流通しているものは、実はほとんどがこちらオランダ産のもの。7月下旬から出荷されるようになり、徐々にレストランやスーパーでも”初物”が出回るようになる。美味しくなる季節を前に、思わず食べたくなってフライングしてしまった。

 

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普段は2kgで€7−10ほどのものが、シーズンになると€4前後になる。ボウル山盛りにしても3杯ほど、たっぷりと楽しめるのだ。美味しいものは、美味しいシーズンに楽しんだ者勝ち。

まずは定番の白ワイン蒸しに。ガーリックとバターだけのシンプルな調理で、あさりの酒蒸しのように簡単にできるのも魅力である。コクのある身と、海の香りがたまらなくいつまでも食べられてしまうほど。白ワインもいいけれど、最近はCAVAのドライな風味と程よい炭酸を一緒に楽しむのがお気に入りだ。

 

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白ワイン蒸しだけでは余ってしまったので、残りは簡単パエリアに。ガーリックを熱して香りを出す。Sanbonetのキャセロールはとても使いやすいのにシャープなフォルムがお気に入りで買ったもの。炊き込みご飯系のものや、煮込み系、もちろん鍋料理にも大活躍。そのままテーブルに出しておいても様になる。

 

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レッドオニオンと米を炒めて、透き通ってきたら水とブイヨンを投入。サフランを入れるのが本場式だけど、今回はカレーパウダーを代用。こちらに来てから、いろいろなスパイスやハーブが手に入りやすくなったけれど、まだまだ使い方を研究中。インターナショナルな国籍を持つ人が集まるオランダでは、ヨーロッパはもちろん中東、東南アジアやアフリカ料理もすでに日常に馴染んでいるため本当にたくさんの調味料やスパイスが身近にある。オランダ料理、を目指して観光へくる人はなかなかいないけれど、美味しい多国籍料理は多いので実はFood loverにはたまらない街だと思っている。

 

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たっぷりのパプリカ、トマト、ムール貝をのせて。普段は和食もアジアンも、中華もいろいろと食べるけれど、南の国の料理は鮮やかな色が多いとあらためて思う。色はそのまま体のエネルギーになるようなパワーがある気がして、つやつやと赤いパプリカが大好きになってしまった。トマトピューレや、ベリー類も思えばよくマーケットで手を伸ばしている。前向きになりたい時には、私はいつも赤いものを食べているかもしれない。

 

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ご飯がふっくらとして、ムール貝が開いたらボリュームたっぷりのパエリアの完成。レモンをたっぷりと絞って、ムール貝の旨味を含んだご飯はおかわり必至の美味しさだ。とても簡単にできるレシピなのに、見た目が華やかなのでちょっと得した気分になる。ゲストにも大好評だったメニュー。徐々に短くなる夜を惜しみながら、またしばらく続くシーズンを楽しみたい。

ムール貝のパエリア(Curry ver.)
米(洗わないで使う) – 2合
水 – 米と同量
ムール貝 – のるだけをたっぷり
たまねぎのみじん切り – 1/2個
パプリカ – 2個
トマト – 1個
ガーリック – 2片
ブイヨン(マギー) – 2個
カレーパウダー – 小さじ1ほど

 

 

From F.G.S.W. August 21, 2017

オランダの魅惑的なソーセージ「Ossenworst」

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ヨーロッパのスーパーマーケットでは、ハムやチーズのコーナーが驚くほど店内の割合を占めている。たくさんの種類がありすぎて、今でもどれを選んで良いかわからないほど。ビーフ、ポーク、チキン…に加えてベジタリアンやビーガン用のものまで。加工品とはいえ、どれもしっかりと「肉」を感じるハムやソーセージは、嗜好品ではなく保存食として根付いてきたのだと実感する美味しさ。いろいろと試してみたいと思いながら、まだまだツボになるものを引き当てる修行(?)は遠いのだけれど。

 

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ソーセージの種類のひとつ、「Ossenworst」というものがある。中身はなんと、生の牛ひき肉。えっ、食べられるの、大丈夫かな…と思うのも初めだけ。一口食べると生肉好きにはたちまち虜になってしまう魅惑の食べ物。

ドイツで暮らしていた頃は、「Mettwurst」という似たようなものがあった。そちらは豚の生ひき肉ソーセージ。その頃もずいぶんとお気に入りの食べ物になっていて、オランダでも生のひき肉にひるむことなく我が家の日常にしばしば登場するもののひとつ。

ソーセージ、とは言ってもペースト状で、ケーシングに詰められて売っている。初めから塩やペッパー、ハーブや燻製などの加工がされていて、ほのかに味や風味がついているのでそのままでも美味しく、くせも匂いもないので食べやすい。ドイツやオランダでは、玉ねぎのみじん切りを加えて混ぜ、ソルトやペッパーで調味をして、主にパンに塗ったりサンドイッチにして食べるそうだ。大体€1.5から€1.8ととてもお手頃。

 

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オランダ独自の、ラスクのような「メルバトースト」は乾燥したパンの種類。クラッカーのような役割のもので、ハムやチーズ、アイオリや甘いチョコペースト、ジャムなど何にでも合う。ちょっとブレックファストの代わりにオープンサンド風にしたり、ティータイム、ワインのお供にも最適なもの。Ossenworstも例外なくぴったりなので、気軽に食べたい時にはこんなのもおすすめ。

しかし、私のお気に入りの食べ方がもうひとつ。

 

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このOssenworst、食感はまさにネギトロそのもの。なかなかお刺身に恵まれない地にいたドイツ暮らしでは、Mettwurstをよく醤油やごま油、豆板醤なんかで味付けをしてご飯のお供にしていたのだ。巻き寿司にして友人たちに振る舞った時は、「SUSHI!!」ととても喜んでもらえたこともある。現地の人からみると、奇妙な食べ方なのかもしれないけれど、Asianイノベーションとして秘密(?)の食べ方だと勝手に思っていたり。ふふふ。
考えてみたら、多少味はついていても牛の生肉(加工はしてあるけれど)なのだから、ユッケみたいなものだと思うと途端に親近感がわく。

 

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ごはんにごまを散らして、ルッコラを敷き詰める。ほのかに香ばしい風味のルッコラは、サラダにも添え物にも合い、手軽にグリーンを加えられるお気に入りの野菜。見た目もボリュームが出るので、手抜きをしてもそれっぽく見えないのがお気に入り。(秘密、二つ目)

 

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レッドオニオンのスライスを混ぜたOssenworstに、温泉卵、フライドオニオンをぱらりとかけて。ご飯を炊く以外は火を使わないOssenworstボウルが手軽に完成。とろりとしたたまごに、少し濃いめの味付けはご飯とも相性が抜群。パンには負けないくらい、ご飯にも合うと思っている。もちろん、美味しいバゲットが手に入った時にはパンと食べたりもするけれど、染み付いた日本の血からすると、ご飯が恋しいと思うのだ。

All photo by Kaori

 

 

From F.G.S.W. August 5, 2017

In the Letters〜魔法使いのSealing Stamp

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子どもの頃から、お気に入りの書店で見かけるたびいつか欲しいなあと思っていた「シーリングスタンプ」。けれど学生にはなかなか手を出しにくい価格だったし、社会人になってからは忙しさに負けて誰かに手紙を書くことさえ忘れかけていた。買っても、使う機会があるだろうか…飾りになってしまわないだろうか、なんて不安(今となっては言い訳だったのだけど)を抱き、いつも購入する勇気が出ず眺めているだけ。こんなのを使いこなせたら素敵だろうなあ、なんて憧ればかりが募っていくばかりだった。その当時は、カラフルで素敵な柄のマスキングテープが自分の中でいちばんのブームで、使い勝手の良さももちろんだけど、貼り方や好みの柄を見つけるたびにデスクの上のコレクションは増えていくのだった。

 

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アムステルダムに来たばかりの頃、街を散策していたら偶然見つけた文房具のお店。随分古くからあるようで、よく手入れのされた木のファサードがとても美しい。ショーウィンドーにはタイプライターや色とりどりのレターセットが並び、オリジナルのスタンプデコレーションがなされている。店内にはひとつひとつセレクトされたであろう羽ペンやインク、見たこともないような美しいレターセットがあり、一瞬で時代が巻き戻ったような世界観にうっとりした。気難しそうな店主はカウンターの中でなにやら作業をし、アトリエも兼ねているようだ。店内は撮影禁止。そのこだわりや実直さが惹かれるポイントでもある。ショーケースの中には数々のシーリングスタンプが並び、忘れかけていたあの道具への熱が思い起こされたのだった。間近で見ると、やっぱり素敵。

 

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ある年のバレンタインデー。その日、女性から男性に、という風潮が当たり前だと思っていた私に、初めてプレゼントをくれた男性がいた。バレンタインデーにプレゼントをもらうなんて体験がなかった私は驚いて、その場で封を開けることができず、楽しみに持ち帰るね、と言うのが精一杯。まして出逢ってから日も浅く、よく知らなかった人だからなおさらだ。驚きすぎて、ドキドキしてまともに顔を見ることさえできなかった。よく知らない人からプレゼントをもらうという行為はリアクションが求められている気がして、本音を言うと少し苦手である。選ぶこと、あげること、驚かせることは心の底から大好きなんだけれど。

 

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ひとりになり、恐る恐る包みを開けると、てのひらサイズの小さな箱が入っていた。その中にあったのは、なんとシーリングスタンプのセット。ぽってりとしたガラスの瓶に入ったワックス、真鍮とウッドのスプーンに、私のイニシャル「K」のスタンプが。そして私の好きなカーキ色のワックス。それはさながら魔法使いの道具のような神秘的な雰囲気で、今まで憧れの存在だったものが私の手のひらに収まっているという信じられない出来事にそれはそれは大興奮。声は出さずとも心が踊り、一度もそんな話をしていないにも関わらず私の潜在的に好きなものを見抜かれてしまった事実に、たちまちその人への信頼は絶対的なものへと変わっていた。

 

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真新しい真鍮のスプーン(メルティング・スプーンという名前だと知った。名前も可愛らしくて好き。)にふた粒ほどワックスを入れ、そっとキャンドルの炎で炙る。いつか、そんなシーンを昔の映画で見たことがあるような気がする。当時はこんな、自分がそれを使う時が訪れるなんて夢にも思っていなかった。それも小さく心が踊るような出来事と一緒に。

 

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その儀式は、まるで魔法使いが何かを始めるときのよう。じわりじわりと溶けていくワックスを眺めながら、なんてお礼を伝えたら良いのかを考えていた。そして、なんで私が好きなものがわかったんだろう、と思っていた。その場で包みを開けなかった私の好みを確かめるように、少し不安げな質問をいくつか受けたのを覚えている。開けなかったのは失礼だったかもしれないし、でも開けたところで上手な驚き方ができただろうか。驚きすぎて言葉が出なかったかもしれない。本当に昔から欲しかったものだけど、そのまま伝えてもなんか嘘っぽく聞こえないだろうか?

こんなことをもやもやと考えてしまうから、プレゼントをもらうのはとても苦手なんだ。

 

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もしもまた一緒にコーヒーを飲む機会が訪れたら、この間うまく笑えなかったことを謝ろうと思っていた。笑っていたかもしれないけど、驚いていたからひきつり気味だったに違いなかった。そして、なんでわかったの、とか、どうしてあのお店を知っているの、とか、聞いてみたいことがたくさんあった。うまく言葉にできないし、そわそわとする気持ちが近づいてくる。なんだか心地が悪いはずなのに、そんなことを思い浮かべている時間は嫌いじゃなかった。そしていつまでもこのままの時間が続けばいいのに、とさえ思っている自分がいた。

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今、そのシーリングスタンプはときどき一緒に使うようになっている。イニシャルが同じ「K」というのはなんとも奇遇な出来事だった。聞いてみたかった質問は煙に巻かれ、まだ真実はわからないまま。ときどき本当に魔法使いなのかもしれない、と思う瞬間がある。だけど、知らないままでいるのも悪くないかな、と思っている。今は、まだ。

De Posthumus Official web site

 

 

From F.G.S.W. August 2, 2017

5:00 p.m. – Homemadeのジンジャーシロップ

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まだまだ夜の10時くらいまで明るい夏。寒暖の差はあるけれど、からっとしてとても過ごしやすいヨーロッパ。雨の多いお国柄、太陽が出ている時期には皆一斉に陽を浴びるべくテラスやバルコニーで過ごす。海はなくとも水辺の多いアムステルダムは、いたるところにたっぷりと水を湛えた運河や川があり、暑いのに涼しげな景色が心地良い。夕方5時になってもまだまだ太陽は頭上高く、瑞々しい緑に木漏れ日をつくる。

 

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たまの暑い日はしゅわっとする炭酸が飲みたい、でも市販のジュースは甘すぎる。一度作ってから常備するのが当たり前になったのが、手作りのジンジャーシロップ。炭酸水で割るとジンジャーエールに、ウォッカを加えてモスコミュールに。紅茶や料理のひと足しにも大活躍。明るい夏はディナーの時間も遅くなりがちで、夕方のちょっと一息つきたいころはジンジャーシロップを仕込むのに最適な時間。この時間に、ゆっくりと作業をするのが好きなのだ。

 

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生姜は青空マーケットで気軽に手に入り、場所によっては3kg €2と言われたこともあった。手のこぶしほどの大きさでも、200gほどのはず。ほとんどただみたいな価格に耳を疑ったが、本当だったのにはびっくり。2−3つでも50ctほどだった時には間違いかと思って、思わず何度も確かめてしまった。ごつごつとして立派で、水分をたっぷり持っていて表面はすべすべ。花を近づけると爽やかなにおい。いつも新鮮な生姜がたっぷりと使えるなら、断然チューブタイプよりフレッシュなものがいい。

できるだけ身を無駄にしたくなくて、包丁の背とスプーンでこするように皮を剥く。皮は醤油につけておくと香りが移って美味しい生姜醤油に。身は適当な大きさにカットし、スライスしたらざらめをまぶすときらきらと輝いて、まるで11月の初霜の景色のようだ。そのまま1時間ほど置いて待っている間はまた仕事に戻ったり、ディナーの準備をしたり。爽快に晴れた日は特に、よく冷やしたワインをキッチンで立ち飲みするのも好きなのだけど。

 

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1時間ほど置くと、水分が出てさらさらとしたエキスがたまる。夜、日が沈んだときにここまで終えて、一晩じっくりと置いてもいい。クローブやシナモンなどスパイスを加えるレシピもあるけれど、和食などの料理にも使いたいので私はいつもシンプルに砂糖だけ。たまに黒糖やレモンを少し加える時があるくらい。ミントをこのとき加えたり、りんごなどのドライフルーツを入れると爽やかな風味になりそう。ドリンク限定の時に今度試してみたいと思っているもの。

 

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あとは水を、身がかぶるほどに足してくつくつと煮込むだけ。30分くらい、と言われているが、欲張っていつも40分ほど煮てしまう。だんだんとろりとしてくるシロップから、ジンジャーの甘くスパイシーな香りが部屋いっぱいに広がってくる。待っていてもいいんだけれど、だんだんと濃くなってくる色や香りに惹かれ、ついつい眺めてしまうのだ。

 

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煮沸した瓶にできたてのシロップを注ぐと、きれいな半透明の蜂蜜色になる。もちろん煮込んだ身にも染み込んでいるので、ぎゅーっと絞って最後の一滴まで。舐めるとぴりっと刺激があって、鼻から抜ける爽やかな香りがたまらない。煮込む時間の長さや、毎回作る量も違うのだけれど、今回の出来は…と試しながら好みの量を探るのも好き。スパイシーな風味が生きるのは手作りならでは。

 

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出来上がったジンジャーシロップに炭酸水を注ぎ、たっぷりライムを絞るとhomemadeジンジャーエールの出来上がり。ピリッと刺激がたまらない、甘さ控えめの大人の味だ。一度飲むともう市販のものでは物足りない。これだけでももちろん美味しいのだけれど、太陽の気持ちよい日はグラスを凍らせて、ハイネケンに加えるのもまた美味しい。たくさん作ってもすぐになくなってしまうので、今では冷蔵庫に欠かせないものになっている。

 

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そして、おまけとして。残った生姜は醤油を垂らして炒め、ごまをまぶして佃煮に。ご飯がいくらでも食べたくなる、おにぎりの具や副菜にぴったりの常備菜になるのだ。平たいプレートに広げて、一晩乾かすとしゃきしゃきした口あたりになって、なおおすすめ。コリアンの友達には大好評だったけれど、その子のボーイフレンドのフランス人には甘塩っぱいのが不思議な味のようで頭をひねっていた。(Very asian taste…だそう)

すべて余すところのないジンジャーシロップ作り。素材も調理法も明確でシンプル。混じり気のない潔さも心地いい。何かを同時進行しながら丁寧にじっくり作る、そんな過程は急ぎすぎた心の焦りや、あれこれ考えていっぱいになった頭をクリアにしてくれる。

Homemadeのジンジャーシロップ
・生姜  できるだけフレッシュなもの。表面に張りがあるものがおすすめ
・砂糖   ざらめなど、お好みのもの。きび砂糖や黒糖、コクのあるものを加えてもGood
・水 鍋に入れたときにかぶるくらい。途中で蒸発したら少しずつ足しながら
生姜の剥いた後と、砂糖のg数は同量。(100gなら砂糖100g)
・保存瓶  蓋ができるものがおすすめ。煮沸消毒をお忘れなく

 

 

From F.G.S.W. July 15, 2017

Kintsugi – 金継ぎ Repair DIY

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日本にいたときから器が好きで集めていたけれど、食器を持ってくるのはなかなかハードルが高くて帰国するたびにちょこ、ちょこと連れて来ている。家に付属しているのでもこと足りるけれど、お気に入りの器やグラスは普通の食べものでも、気分も時間も特別感のあるものになる。ついついパッケージのまま手を伸ばしてしまいそうになる誘惑は何度とあるけれど、お菓子や食べ物は簡単なものでも、せめて器に移すのは忘れないように…というのが自分なりのポリシー。

あるとき、気軽に使うのが忍びなくて、一度も使わずにいたお皿を持って来たことがある。とても不安だったけれど、パッキングをして服の間にはさんでおけば…と思ったのは甘く、やはりスーツケースを開けた途端に見えたのはかなしい姿。そのときのショックといったら…!

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坂井千尋さん作の、つばめのお皿。倉敷の林源十郎商店で器のフェアをやっていたときに持ち帰ったものだ。ざらっとしたわら半紙に版画を刷ったような絵の雰囲気と、手にしっくりくる大きさ。どの絵も味があったけれど、全ては買えないので一番好きだったつばめのモチーフにしたもの。

接着剤でつけるだけではひびから水分が入ってしまい、水を吸い込んでしまう。見た目も良くないし、そのまま使い続けるのが不安だった。こんなときに「金継ぎ」ができたらな、と思っていた。

ヨーロッパでは、アート作品としてもギャラリーやセレクトショップでよく”Kintsugi”を見かける。アンティークやヴィンテージのもの、割れてしまったものもKintsugiをすることで一点の価値あるものとして受け入れられているのが印象的。でも日本のように滑らかにするものではなく、ちょっと接着部がはみだしているのがノーマルみたいだ。ざっくりしていても、気にしない気にしない。

 

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京都で見かけた本物の金継ぎの美しさが忘れられず以前トライしようとしたものの、なかなか時間的にも価格的にもハードルが高そうで手を出さなかったことがある。でも、ヨーロッパ流の”Kintsugi”を見てから自分の中のハードルは下がり、なんちゃってでもいいからやってみようと閃いたのが、クラフト用のラッカーを使うこと。

これなら水分からも守れるし、ひびが味わいを増してくれるはず…とちょっとだけ期待をして。もちろん本物の美しさにはかなわないけれど、不安なまま使いつづけるよりはずっとまし。

画材展でゴールドのラッカーと筆を買い、いざチャレンジ。

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今回は接着剤でリペアした後だったので、ひびの上から塗っていくだけ。慎重に慎重に…

溝を埋めるのは難しいので、後からもう一度塗りをするか、今度は(今度、がないことを祈るけれど…)パテなどで隙間を埋められたらもっと良さそうだ。

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初めてはドキドキ。しかしラッカーは、塗りたてであればとても簡単に除光液で落とすことができる。多少乾いても、はみ出しは修正が可能。これは嬉しい気付き!

 

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裏と、表と。なかなか集中力が必要だけれど、これで水物も載せられるようになればすごく嬉しい。ドキドキしながら筆を進める。そして出来上がったのがこちら。

 

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最初は筆が細かったりがたがたしたので、後日もう一度裏面を塗り重ねた。ちょっと太いけれど、それも個性(という便利な言葉を覚えた)。以前のように、洗うたび水染みがしないようになり、雰囲気が出て一層愛着が湧いた。簡易DIYにしては、自己満足。フルーツやチョコレート、ちょっとしたおかずなど似合う範囲が広がった気がする。

 

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としばしの嬉しい気持ちも再び撃沈。今度はこちらでチャレンジしてみよう。黒にゴールドも映えるはず…なんて言い聞かせながら。

「金繕い」とも呼ばれる金継ぎ。きんつくろい、なんて繊細で美しい響きだろう。”Kintsugi repair kit” はこちらでも販売されている。

Humade – Kintsugi repair kit

 

 

From F.G.S.W. July 10, 2017

ソウルフードのだし巻き玉子

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一番好きな食べ物は、と聞かれたら、たまご。と答えてしまうかもしれない。でも、たまごはどんな姿にもなれて、どれも美味しいので答えにするには反則かもしれないけれど。卵かけご飯も、スクランブルもサニーサイドアップも、食べ方で魅了される素材は私の中でたまごが永遠のいちばんだ。料理はたまごに始まりたまごに終わる、と言われるように、たまごをマスターするのが暮らしの目標のひとつでもある。

心を素直に戻したいとき、身体が少し疲れたとき、いつも食べたくなるのはじわっと出汁が染み出すだし巻き。前回帰国したときに、スーツケースに四角いフライパンを忍ばせてきた。日本にいたときの私は成功したことがなかっただし巻きも、こちらで食べたいと思った回数ぶん、いつのまにか上達しつつある。でも毎回反省が残るので、まだまだ修行中の身ではあるのだけれど。

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出汁の量や甘さなど、体が求めているときに微調整をしながら。卵が2個に対して、ヴィンテージマーケットで持ち帰った小皿いっぱいの調味料がちょうど良いとわかった。計ってみたら、大さじ2と3分の2ほど。そしてまたスーツケースに忍ばせてきた、この片口の器がだし巻きを作るのにも、器としても本当に大活躍している。

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巻く」ことを意識しすぎていたのだけど、はじめは寄せるだけでも、あとから形になってくれる。油をきちんと毎回ひくこと、強火と中火の間ほどを守る。基本を忠実に、その通りにすることがとても大事。基礎、について、頭を柔らかくすることについて、いつも考えさせられるのがこのだし巻き。

 

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よいしょ、なんてつい口に出てしまうけど、集中できて、心が落ち着くような気もする。うまく巻けたときには、その日がハッピーに感じられるほど!

できたては、いつもホースラディッシュ(山わさび)を添えて。道民の私には馴染み深い山わさび、醤油との相性も抜群。ほんのりぴりっとする味と、じゅわーっと出汁が染み出てくる、ふわりと優しいだし巻きと。ご飯が、もりもり食べたくなる。

 

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お皿にじわっと染み出た出汁の具合で、今日の出来具合を測ったりして。焦げ目や角のカーブ具合も。なんだか占いのような気分も楽しくなる。頭を落ち着かせたいときには、ぜひおすすめ。ほっとする味のだし巻きは、私のソウルフードのひとつ。

 

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だし巻きたまご、覚えやすい量で、
・卵  Mサイズ2個。二人で食べるときには3個がおすすめ
・出汁  大さじ2
・みりん  小さじ1
・醤油  小さじ1
・砂糖  小さじ1
・調理用オイル 適量

All photo by Kaori

 

From F.G.S.W. July 2, 2017

 

“Burrata” – とろける魅惑のフレッシュチーズ

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ヨーロッパに来てよかったと思うことは、チーズやバターがとてもお手頃に手に入ること。ナチュラルチーズはもちろん、さまざまな種類のハム、そしてブレッド類。

以前からどうしても食べてみたかったチーズがある。その名は”Burrata”、「ブッラータ」と呼ばれるモッツァレラチーズの一種。姿はよく似ているが、中にクリームの入ったチーズが包まれているというスペシャルなもの。フレッシュさが命のこのチーズはイタリア製。ナイフを入れるととろっとろのクリームが流れる姿に焦がれ、どこかで手に入りますように、とスーパーやチーズショップへ行くたびに意識をしていた。

 

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とろとろ、やカリカリ、もちもち、という「食感」は、食べることにさらに至福を感じられる要素だ。食べることが大好きな私は、できるだけ食感を作りたいがために、料理を作っていてもついひと手間を加えて遠回りしてしまう。さっさと温かいうちに食べたほうが、美味しいのかもしれないのに…。食感の全てを叶えられるチーズが私は大好きだ。ああ、Burrata、食べてみたい。

 

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そしてある日、念願のBurrataがスーパーに。普通のモッツァレラは€0.45(50-60円)から。ごく日常の、まるで豆腐のような存在。こちらのBurrataは、オランダの大手スーパー”Albert Heijn”では€2.99(約380円)。こんなお手頃で、本当にあのとろとろなのだろうか…なんて不安も、本当はあったのだけれど。あまりに嬉しくて、一緒にパンチェッタや真っ赤なトマト、レッドオニオンなども買い込んでしまった。楽しみすぎて、その日はどうやって家に帰ったか覚えていなかったほど。

 

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こちらが念願のBurrata。蓋を開けた途端、ノーマルなモッツァレラとは全然違う、すべすべとして2ランクほど白くて艶のある姿に驚き、ときめきを感じた。柔らかくて、割ってはいけない、とちょっとひやひやしながらお皿にセット。とても繊細なものだと、触っただけでわかる。
バジルは育てている苗からちぎったフレッシュなものを。ふわっと香って、トマトとの相性も抜群。チーズ、美しくて割るのにとても躊躇してしまう。

 

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おそるおそるナイフを入れると、張りのあるチーズからクリームが溢れてきた。文字通り”とろとろ”、まるでチーズのジュースが果実から溢れてくるよう。スプーンで掬ってひと口味わうと、ミルクのコクがたっぷりと口の中に沁み入る。これは美味しい!

 

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ミルクの味が濃厚で、そのまま味わうにはオリーブオイルと塩、黒胡椒でも十分すぎるごちそうに。お腹はひとつ、口もひとつしかないのだけれど、次はこんな風にあんなふうに…というレシピがどんどん浮かんでくるのだった。パスタもいいし、ディップも素敵だろうな。フレッシュでもこんなに美味しいのだったら、次は焼いてみるとどんな風になるのだろう…。味わいも姿も、魅惑のチーズ “Burrata”。今度は大切な友人たちを招いて、ささやかなワインパーティーを開こう。美味しいものは、人を幸せにする。

photo by Amanda
Tieghan

 

 

From F.G.S.W. June 30, 2017